呼吸とライディングの関係に係る考察

08/03(日)の中級で、KJMイントラが、イントラ講習で教わったこととして、呼吸のことをあげていた。「『これが正解』というわけではないが、もし呼吸を意識したことがない人がいたら、ためしにスロットルをあけながら長く息をはいて、ブレーキングのときに吸ってみてください」と。


KJMイントラ自身も呼吸を忘れているときの一本橋では途中で落下することが多いとのこと。


武道の有段者のHMS中級の知人は古武道に通ずる呼吸法ではないか、と日記に書いていた。


自分も、KJMイントラの話を聞いたときは、反射的に「長く時間をかけておなかからゆっくりと息を吐き出して力を入れていき、瞬間的に吸う、というのは『息吹(いぶき)』に似たところがあるのではないか」と思ったのだが、非常に困ったのは、自分が今まで意識してきた呼吸は逆だということ。


もちろん、長い直線があるところではスロットルをあけながらすいっぱなし、ブレーキのときだけはく、というわけにはいかないが、フルロックに近いような短いオフセットが連続するところや直スラなどでは、明らかに意識してブレーキと同時に息を吐いている。リズムよく「ハッハッハッハッ」と息を吐きながら左右均等に切り返していくかんじだ。


自分がなぜそうしているかという理由をいくつか考えると(後付ではあるが)

1)スロットルをあけるときは自分の方に引く動きで、スロットルを戻すときは自分の体から離す動きだから、呼気・吸気の流れはスロットルの方向と一致していて自然に感じる。


2)フルロックに近いような短いオフセットだとブレーキと同時にハンドルを放り投げるようにするのだけれど、ハンドルを押し出す動きもスロットルの動きと同様に体から離れていく方向だから呼気の方向と一致していて自然に感じる。


3)そもそも、息を吸いながら脱力というのは自分にとってはかなり難しく、息を瞬間的に吐き出しながら脱力するほうが楽だ。


4)パイロン系の速度域であれば、加速Gに対抗するための姿勢作りは、上体を伏せることで(上半身が地球にひっぱられる力も借りて)かなり自然かつ容易にできるが、減速Gに対抗するための姿勢作りは、加速時に比べて自分の意思と体が作り出す力のみで対抗するためにさらに腹筋に力を入れなくてはならない。(あくまでも自分がそう感じているだけだが)少なくとも私は息を吸いながら腹筋に力は入れられない。打撃系の格闘技でも相手が息を吸った瞬間を狙ってボディに打撃を叩き込むほうが筋肉が緩んでいてダメージは大きいはずなのだが。


まあそんなかんじで、息を瞬間的に吐くと上半身(肩より上)から脱力できて腹筋には力が入る、という(3)・(4)の理由が大きいのだが、とにかくこんな理由で自分はブレーキングのときに息を吐いている。


ただ、(1)・(2)に関しては、ブレーキのときにへそを引く動きと吸気の流れは一緒じゃないかといわれると何もいえないし、さらに、「とはいってもお前ブレーキングのとき上半身ガチガチでハンドルおさえつけて全然脱力できてないだろ」といわれるとさらに何もいえない。(脱力できたときはうまく走れるのだ。為念。)


自分の技量と関係ないところでは、今乗っているVTRが、スロットルは何も考えずにラフに開けていけるかわりにフロントブレーキは全然効かなくて、小柄な車体のネイキッドのくせにハンドルは結構遠くにあるアグレッシブなポジションのせいでリア荷重が抜けやすく、渾身の力で臍を引いてブレーキングしなくてはいけない車両であるというのも、「アクセル開けながら吸ってブレーキかけながら吐く」というのが自然に感じる理由かもしれない。


1300なんかに乗っていたらアクセルのあけはじめには細心の注意を払わなくてはいけないだろうから、自分もそんな大排気量車に乗っていたら息を吐きながら細心の注意を払ってじわっとアクセルをあけていたかもしれない。もしくはSpec3もアクセルあけはじめに細心の注意を払うし、リアブレーキ踏みっぱなしでアクセルを開けてドンツキをおさえたりするから、あれに乗り続けていたら呼吸は逆の方がいいかな、と思っていたかも。


この呼吸法を意識しはじめたのは、今年4月に浜名湖でCB400SuperFourのRevoに乗ったときで、こいつは普通のSpec3よりもアクセルあけぎわのドンツキが少ない優等生だったから、辻褄は合う。その後桶川に戻ったら、ものすごい勢いで調子が落ちて結局400が怖くなって乗れなくなってしまったのも何かを示唆しているようだ。


話は冒頭に戻るが、VTRに乗りながらKJMイントラに提示された呼吸法(普段と逆)をやってみたものの、長い直線が続く新コースなどでは長い時間をかけて息を吐き出すのは感覚的に取り入れやすかったが、市街地になるとどうしても(苦手で緊張することもあって)うまくできなかった。


自分が400に乗っていたらどうだったのだろうか。また、アクセルの開け際が鈍い750に乗っていた人はどうだったのだろうか。


今思えばなかなか興味深い。

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追記だが、教習中の引き起こしでぎっくり腰をやって以来、重いものを持ち上げるときには必ずながーく息を吐きながらゆっくりものを持ち上げるようにしている。勿論引き起こしも。ものを体に引き寄せるのに対して呼気は体から出て行くわけで、(1)・(2)で取り上げたのとは異なり、力を入れるときに必ずしも呼気・吸気のベクトルが一致しているほうがいいというわけではないかもしれない。腹に力を入れる時には息を吐く、という意味では(3)・(4)とは一致しているのだが。

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さらに追記。


今の私のやり方と違うけど、KJMさんの提示してくれた逆の方法を取り入れるにはどうすればいいか。


いろいろ考えた結果、『息を吐いたほうが筋肉が締まる』という感覚はたぶん間違っていないと思うので、スロットルをあけるときに長く息を吐きながら腹に力を入れるか、ブレーキングのときに短く息を吐いて腹に力を入れるのか、どちらを重視するかの違いなのだろう。いつ吸うか、はたいして重要ではない(吸うのはその反動で吐くためであって、吐く前に吸えばいい)と考えれば、逆のやり方も取り入れやすい気がする。


私が呼吸を特に意識するのは、息を吐く時間も吸う時間も同じくらいの短い切り返しが連続するところで、KJMさんが呼吸法について取り上げたのは、市街地・新コースの相対的に長い直線があるところだから、まずそこの条件の違いを考えなきゃいけないよね。


前半でも書いたように私だって長い直線があるところでは息を吸いっぱなしではかないかといえばそんなことはない。ブレーキのときに吐くように、だけは意識しているけれど、短い直線しかないなら吸うタイミングはアクセルオンと同時になるし、長い直線があればブレーキにタイミングがあうように何度か呼吸しているはず。走り幅跳びの助走と踏み切り足みたいなものかな。


このように自分にとっては「とにかくブレーキのときに吐く」のが大事なのだが、逆のやり方も同様で、長い直線でアクセルを開けながら息を吐いて筋肉に力を入れていく、ということが重要、というのなら納得だ。


もし逆のやり方が「ブレーキをかけながら吸う」のも「アクセルをあけながら吐く」のと同じくらい重要、だと言うのなら、しかも長い直線でも短い切り返しの連続でもそれが変わらないというのなら、ちょっと今の私にはうまくとりいれられそうもない。からだのうごきがばらばらになってしまいそうだ。

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ただ、そもそも、操作ミスの許されない公道で、大きなパワーを持つものを、はるかに小さいパワーしかない人間の全身の力を使って注意深くコントロールする、というバイクの一般的な乗り方を考えると、エンジンのパワーを引き出すアクセルオンのときに長く息を吐いていくのは当然という気もする。


ブレーキと同時に息を吐くのが自然に感じる、というのは安全なクローズド空間でパイロンに常に導かれて、短い直線でも瞬間的にスロットルを全開にしてブレーキングとアクセルオンを短い時間に繰り返すというスポーツ走行しかしたことのないペーパーライダーらしい考え方なのかもしれない。

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とうまくまとめたつもりだったのだが、さらに追記。


ふと思ったのだが、パイロンを頂点としたスラローム(直スラ、オフセットスラ)は比較的得意だけどコーススラロームは苦手、という私の得手不得手はここにも原因があるのではなかろうか。


パイロンを頂点としたRのきつい旋回は短い時間にブレーキングを行うことで旋回が済んでしまい、呼吸のタイミングにもあわせやすい。


一方、桶川の市街地コースやバリアブルのトイレ前の定常円部分は、中途半端なRで、旋回時間が長くパーシャルを作ってリアブレーキを引きずったままじりじりと旋回しなくてはいけない。アクセルを開けるでもなく閉じるでもなく、リアブレーキも長い時間引きずりっぱなし。だから、息を吐くのか吸うのかよくわからなくなってしまって混乱するのかも。もっと他にもいろいろ理由はあるとはおもうが、原因のひとつではあるかもしれない、と思う。


本文の真ん中あたりで、「実際逆の呼吸法をやってみたら長い直線ではやりやすかったけれど市街地ではやりづらかった」、と書いたけれどそういう中途半端なRの場所でこそ、アクセルを開けるときに息を吐く、というイメージでやればいいのかなぁ?


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